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4月から続いた超豪華写真展の締めくくりとも言えるマイケル・ケンナ写真展に足を運んだ。アーウィット、マグナム、ドアノーが"動"だったのに対しマイケル・ケンナはまさしく"静"。これまでと180度違う写真家である。
マイケル・ケンナといえばハッセルブラッドによるスクエア写真、長時間露光というイメージがすぐに思い浮かぶ。今回も長時間露光による写真が多く展示されていた。どれもが"マイケル・ケンナらしさ"が存分に発揮されており、統一されたフォーマットで整然と展示されている様子はそれ自体がアートのようだ。
1枚1枚じっくり見ていると自分がその世界にいるかのような錯覚に陥る。展示されている写真そのものは大きくないのだが、その写真に流れる時間、動かざるものの説得力が感じられるものだった。周囲からは「長時間露光が凄いね」という声も聞こえたが、個人的には露出のバランスと巧みなコントロール、印画紙への焼き付け技術の凄さに圧倒された。黒い部分にギリギリの階調を残すその表現力は凄まじい。
モンサンミッシェルで撮影された写真が何枚か展示されていた。モンサンミッシェルと言えばもう撮影し尽くされた被写体だが、マイケル・ケンナのモンサンミッシェルはもはや写真ではない、絵画のようだった。
今日の写真展に展示されている写真はマイケル・ケンナの公式ウェブサイトでも見ることができる。しかし、ウェブで見るものと本物はやはり違う。プリント技術も含めて写真なのだ。今日は本当に良いものを見たと思う。
ただ1つ苦言を呈するとすれば、ギャラリーにおける写真管理の点だろうか。せっかくの写真なのに写真を覆うガラスの上に多数の埃やゴミがあったのだ。おそらくこれまで見てきたようなスナップ写真やドキュメンタリー写真の場合、写真の中で色の変化が激しいのであまり気付かないのだろうが、マイケル・ケンナのように階調を楽しむ写真の場合、ゴミが非常に目立ってしまう。せっかく薄い灰色から黒への階調を表現しているところに白いゴミが着いているのだから。とにかくこれが残念で仕方なかった。もうブロワーを持って吹き付けたいくらいに。ただ、無料で入場できるのである程度は目を瞑るべきかもしれない。
4月から4つの写真展に足を運び気付いたこと。本当に良いモノクロ写真は絵画のようなんだ、ということ。バライタ紙に焼かれたモノクロの表現は、その一つ一つを筆で丹念に描いたかのような繊細さがある。この表現力は決してカラーでは出せないのではないか。カラー写真はやはり写真で、絵画のようにはなれない。
今日の写真は私の"IN FRANCE"。
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