11月13日・14日は観光の社会実験が行われ、訪れた。
足助(あすけ)。中部地方では随一とも謂われる紅葉の名所、香嵐渓に隣接する歴史的町並みを持つ町である。
香嵐渓の紅葉時期の11月だけで100万人の観光客が訪れるとも言われるこの地域だが、そこから歩いてわずか5分のところにある足助の町並みは残念ながらあまり知られていない。
今回の社会実験は東京大学と豊田市が取り組んだ。主に香嵐渓への観光客に足助の町並みを知ってもらうこと、足助の町なかでは普段見ることのできない歴史的なお宅の中庭を一般に公開し、足助の文化を知ってもらう主旨で行われた、「うちめぐり」である。
そもそも、足助で商業を営む人にとって香嵐渓の紅葉シーズンは年に一度の書入れ時。この1か月の間に1年分の収入を稼ぐとも言われている。しかし、足助の町並みへの観光客の増加を期待できないため、商店は本来の商店を閉めて香嵐渓に出店するようなこともあったという。
足助の町にも資源はある。魅力がある。
今回の社会実験は、商店街の店主や一般市民が中心となって、足助の町並みに訪れた観光客をもてなし、案内するものとなった。
2年前の社会実験では、「町なかに魅力のある施設がない」と観光客が十分に楽しめる環境を作ることのできなかった足助。今回の取り組みは、魅力的な施設を作らなくとも、今ある家々に十分な資源があり、それらは観光客を楽しませるのに十分な魅力を持ち合わせている、ということを示したのではなかろうか。
この資源を発掘できた、今回の取り組みはとても価値のあることだろう。そして、こうした家々の資源を、それぞれの持ち主が案内するというのもまた、観光客にとっては嬉しいことではないか。
また、このような家の中を一般に公開する取り組みは、観光客のみならず地域の人も楽しめるものなのだと気づく。地元の人でも他人の家の中は見たことがないので、地元の人もそれぞれの家を廻ってみようと「うちめぐり」を楽しんだようである。
この社会実験は、多くの地元の方自身が主体となって動き、足助の町並みを観光客に紹介するその一体感を生み出したことも大きな成果であろう。この力がきっと今後の足助の活性化に向けた大きな動力となるだろう。
社会実験を実験で終わらせないために、足助の観光について私見を述べたい。
・観光による収益化に向けて
今回、各家への入場は無料、ガイドや案内も無料であった。
料金に見合う対価があれば観光客は支払ってでも見たいものであり、今回のそれぞれの家で見せてもらったものに私はその価値を感じた。ただ、観光客に「無料で当然」と思わせてしまうと料金を設定しても集客は難しいだろう。今回は最初の”実験”だが、今後同様の取り組みを続けていくとすれば、観光客には「お金を払ってでも価値のあるモノ」と思われるようになる必要があるだろう。
ただ、値段設定については十分な検討が必要であろう。
・持続的な観光に向けて
おそらく今回のような取り組みは恒常的に行うのは地元の負担も大きく、現実的ではない。
年に1度、2度の取り組みとなるだろう。すでに数多くあるまちなかでのイベントと対して、今回のように町の内部を見せる取り組みを足助の観光においてどう位置付けるか。
とある店主の話では、今回のような取り組みは紅葉の時期に行うのがよく3月のひな祭りなど、まちなかでのイベントに合わせて行うことは望まないという。これは、まちなかの至る所で出店が展開する(俗っぽい)空間へと変わる時期の観光客ではなく、町並みを理解できるような観光客のみが訪れる紅葉の時期のほうが「うちめぐり」の価値を伝えられるからである。
矛盾するようではあるが、まちが静かであるからこそできる「うちめぐり」。足助の文化を理解できる観光客に、静かな町並みを理解してもらう取り組みとして、「うちめぐり」があるのかもしれない。
・「観光地化」への危惧
幸いなことに、現在足助には所謂「土産屋」や外部資本による店はない。今の足助の良さは、そこに人々の生活が感じられる風景であり、地元の方々のおしゃべりする空間である。
地元の方々もこの魅力には十分気付いており、他の歴史的な町並みによく見られる観光地化を望んでいるわけではない。このスタンスを見守りたい。
今後の展開が本当に楽しみである。
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香嵐渓の紅葉 |
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足助の町並み |
西川君お久しぶりです。今回会えなかった事は大変残念でした。でも相変わらず自分のスタンスで頑張っているようで安心しました。
返信削除また西川君の私見を読まさせて頂いて、足助人の気持ちをしっかり感じている事を嬉しく思いました。
私も今回のうちまちめぐりを体験し、地元の方々が目を輝かせて自分の家を自慢している姿を見て、足助が代々守ってきたものが素晴らしい資源であった事を確信しました。観光客に媚びる事無く、向う方向を間違えず今の姿を大切にし、来ていただける方々に感謝の気持ちを持ち続ければ、その先には昔の足助の復興があるのだと思います。
何とか町づくり部会の反省会には飛び込みで出席し皆さんと意見を交わしたいと思っています。今度は同じ社会人としてお酒が飲めたら良いですね。