佐原は1996年、真壁は2010年に選定され、15年の差である。
とはいえ、どちらとも重伝建地区に選定されるだけの力を持った町並みであるし、選定が早いほど歴史的価値が高いとか優れているということではない。
もちろん、重伝建制度は国から一定の補助金が毎年交付されるため、選定からの月日が経っている町ほど歴史的環境の整備や町並みの修繕は進んでいる。その結果として、町並みの美しさや整備状況はある程度選定からの月日に比例しているのかもしれない。
今回2つの町を歩いて、様々な点で町の差や違いを垣間みることができた。偶然にも、両町とも町中で雛祭りイベントを実施しており、観光客という立場から少しこの2町で感じたことを記してみよう。
◆佐原
佐原は2年前に毎月のように調査でお世話になっていたのだが、その頃と比べても2年の間に大きく成長していた。また、今回観光客として町を見ると、観光客を受け入れる体制は非常に秀逸である。町並み観光を進めていく上では良い事例となろう。
①新規店舗の相次ぐオープン
この2年の間に、多くの空き家が改修されて店として活用されていた。個人的には何よりもこの変化に驚いた。
重伝建地区選定後当初は、市は歴史的建造物の修理・修復に力を入れていた。ある程度進み、町並みとしての連続性を再生できた頃から徐々にその活用方策に力を入れるようになったと聞く。
現在の佐原は建造物の修復と活用がスムーズに繋がりを持っており、その証拠が2年の間に新たに生まれた店舗たちではないか。私の記憶の限りでは、中心部に少なくとも4軒は新しく店がオープンしていた。
このように新しく店がオープンすることで、町の中で既存店舗との競争が生まれ、互いに刺激しあってより良い商店が生まれることになるだろう。
その一方で、佐原の町並みに相応しくない外資店舗が見受けられたのも事実。そういった店舗は規正すべきではないか。
②インバウンド観光客の誘致とその成果
店舗がオープンするのはそこにニーズがあるからとも言える。とすると、観光客は一定規模訪れているのだろう。近年、佐原は成田空港からのアクセスの良さを活かし、インバウンド観光客の受け入れも行っている。今回も外国人観光客に出会ったが、更に観光客を呼べる環境があると言える。その点で、佐原はまだまだ発展できる。
③地域資源の見せ方
どの商店も店空間の奥にある中庭を見せる空間作りをしていた。
「中庭まで見るだけでも良いのでどうぞ」と声をかけられて庭に入ると、庭を見せてもらった後はその店で買い物をしたくなるものだ。つまり、店主の人柄と中庭の魅力、店舗で扱う品目の魅力。それら全てが商店の資源であり、その集合が佐原という町を形成している。
今回の佐原、満足度は非常に高い。あいにくの天候ではあったが、それでも十分満足できる町だった。
今後の発展を期待して、気になる点を2つほど挙げよう。
1つは、上記の通り、町並みに相応しくない店舗の扱いについて。空き家よりも店舗がある方が町は活性して良い。それは言うまでのないことだが、どんな店でも入っていれば良いのか。議論が必要なところである。
そして、2つ目は、如何にして町を周遊させるか。見所はほぼ中心部に凝縮しており、歩きやすい町ではあるがそれが一方では観光客の滞在時間を短くしているのではないか。観光客の滞在時間の短さはどの町でも課題となる1つ。佐原ではそれをどう克服するのか。
町の資源性、受け入れ体制などはほぼ完成系に近い。それらを使った観光マネージメントが今後の議論かもしれない。
佐原 商店の中庭にて |
◆真壁
真壁は地元中学生が町並みの案内をしていたり、商店の方が優しかったりと、着いた直後から良い印象を持った。
真壁の町並み |
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